共通番号制を導入する際のハードルを乗り越える「アバター方式」

国による共通番号制の導入が検討されています。国民にとって第一の不安はやはり個人情報の漏洩でしょう。中には漏洩されて困るような個人情報など無いという人もいるでしょうが,それは「我が家には盗まれる物など置いていないから家に鍵をかけない」と言っているのと同じです。物やお金は盗まれても損害は有限であり,回収することも可能で,最悪でも諦めれば済みますが,個人情報はいったん漏洩するともはや回収は不可能で,むしろ盗まれてからが本当の災難の始まりです。
ところで,個人情報が盗まれるとはどういうことでしょう。それは個人が特定できる情報(顔写真,氏名,住所,電話番号,戸籍等)と,その個人の経済活動や社会生活の情報(年収など税の納付に関係する情報,介護や医療など社会保障給付の履歴など)がセットで盗まれることです。どちらか片方の情報の漏洩の場合,例えば「匿名A氏の年収が1億円」という情報を第三者が知ってもほとんど意味がありませんが,「特定の個人の年収が1億円」というセットになった情報が悪意を持った第三者に渡ると実害が生じる可能性が出てきます。したがって,個人情報を保護する上で最も重要なのは,この一対一の対応情報です。また,これらの情報が漏洩する場は主にネットです。ネット上でこの情報がセットで飛び交うのは危険極まりないことです。
そこで私が提案するのは,個人を特定する情報と,個人の活動情報との間に,アバターという架空の分身を立て,ネットでの情報のやりとりは全てこのアバターとして行われるようにし,その際に特定の個人とアバターをヒモ付ける情報はネット上で決して一緒に移動しないようにするのです。そうすれば先の例でいえば,第三者が手に入れることの出来る情報は「アバターAの年収は1億円」というところまでで,実在する特定の個人には到達できないことになります。
今回の共通番号制のように国が国民に背番号を導入しようとしてきた歴史は古く,いくつもの政権がそのハードルの高さゆえに実現できなかったのですが,そのハードルの1つが個人情報の保護という問題です。この「アバター方式」はそれを乗り越えて,共通番号制を導入するための1つの方法だと思います。