共通番号の雛型

いったん漏洩した個人情報というのはいかなる方法でも回収不能です。情報によっては一生が台無しになる可能性もあるのです。たとえば先天疾患の病歴などが漏洩したら、建前は別として本音の世界では結婚差別されるかもしれません。前科などがバレたら罪を償った後でも就職差別されるかもしれません。そして、ネットに政府の意向に反する書き込みをしたら、民主的でない国家なら“抹殺”されるかもしれません。
そもそも人は番号など背負って生まれてこないのです。番号無しで何不自由なく生きていけるようにできているのです。“名無しでいる自由”というものがあるのです。社会組織によって個人が特定され監視されていると考えただけで、行動が制約される気がするのは私だけでしょうか。指紋が登録されていない自由。逃げ切れる自由。変な言い方ですが、犯罪は犯さないけれど、犯せる可能性は失いたくないみたいな感覚はおかしいでしょうか(ちょっとおかしい気もしますが)。
また、人は過ちを犯すものであり、隠したい秘密のひとつや二つあるのが普通だと思います。私など穴を掘って隠れたくなる恥ずかしい思い出がたくさんあります。それを、人は忘却するから、あるいは他人も同じように忘却してくれるはずだと期待できるから、何とか心の平和が保てているのです。それが、ネット上のどこかに記録として残り、更新され、日々拡散して一生誰かに笑われ続けるのだと思うと、内向きの性格の人は死にたくなるでしょう。外向きの人だったら、そんな社会を破壊する行動に出るかもしれません。
このような本質的な問題やデメリットに比べ、税金が確実に徴収できて不平等が是正されるとか、役場の窓口に行かなくて事務手続きが減って便利だとか、死んだ時に無縁仏になりにくいなどというメリットは、あまりにも表層的なもののように思えます。
しかし、一方で共通番号が今後の情報化社会の発展にともなって、ますます必要性が高まってくることも確かです。いえ、個人が世界中の不特定多数の人とコミュニケーションするツールが人類社会に登場したからには、ネット上で個人個人が識別されるのは必然とすらいえるのです。人類社会がいつまでも情報原始社会でとどまってることは不可能です。だとしたら、どうせ番号制度の導入が必然なら、国家に強制されるより、国民がイニシアティブを取って自由度の高い番号を獲得した方がよいに決まっています。
そこで、私が提案するのが「時番号」です。この番号は国民の一人ひとりが主体となって獲得して、それを国に預けて使わせてあげるという形を取ります。番号を変更することも個人の意思で可能で、個人情報との紐付けの履歴も残しません。違う番号にすることは、違う個人になると思ってよいでしょう。ただあまりに恣意的に個人の気まぐれで変更していたら、匿名の「捨てハン」と同じで、個別番号で識別する意味が薄れてしまいます。そこでJibangoでは一定期間はよほどの犯罪でない限り番号変更を認めず、その代わり一定の周期で、全員が一斉に番号を変更するようにします。
具体的には12年に1回全ての番号を更新します。情報漏洩したとして、その被害は最大12年間でおしまいで、次の12年は真っ更な人生を歩むことができるようにするのです。考えて見れば、年という単位の上に、人生を区切る単位が無いのが不思議です。Jibangoは干支を一区切りの人生の単位と考えて、12年ごとに全員の時刻番号を更新することで、被害の期間を短くします。時刻番号の個人情報の漏洩対策は、漏洩を防ぐためにガチガチにセキュリティーを高めることではなく、情報は漏洩するものと考えて、被害の期間を許容できる程度に短くする方法をとるのです。
以上のような時刻番号を共通番号の雛型として私は提案します。